インボイスの豆知識

インボイス登録後に納める消費税には3つの計算方法がある

いよいよインボイスに登録してしまった方々は、これから毎年、売上高の増減に関係なく消費税の納税を行っていきます。

実は、消費税の課税を計算する方法はいくつか種類があります。

大企業だけでなく中小企業も課税の対象になるので、計算方法を変えるだけで税負担が少なくなるような措置も用意されています。

経理作業の簡略化もでき、節税できる計算方法もあるため、個人事業主や中小企業の経営者の方は上手に利用していきたいものですね。

ガイドマン
免税事業者のままで事業を継続する方には今回は関係のないお話となります。

ここでは、3種類の課税方法について見ていきたいと思います。

原則課税

「原則課税」は、中規模経営から大規模経営の企業で採用される課税方法で、いわゆる消費税の通常の計算方法となります。

原則課税の選択は、以下どちらかの条件が必要です。

原則課税の条件

  • 2期前の課税売上高が5,000万円を超える
  • 原則課税を選択する

原則課税の場合、計算は以下のようになります。

原則課税

売上が1,100万円(内、消費税100万円)
経費が330万円(内、消費税30万円)
支払う消費税は100万円-30万円=70万円

上のように、全体の「売上」と「仕入や経費」にかかる消費税をすべて計算するため、期中の取引1件1件において消費税を計算し、請求書に明記します。

「原則課税」は、取引の内容や税率が多様である場合に適していますが、詳細な記録と計算による膨大な管理と手間が必要になります。

簡易課税

「簡易課税」は、年間売上が一定額以下の場合に適用される方法で、主に中小企業が選択する課税方法となります。

「簡易課税」となるには、以下の条件が必要になります。

簡易課税の条件

  • 2期前の課税売上高が5,000万円以下で簡易課税の届け出をした場合
  • 届け出は、課税期間の前日までに届ける
  • 免税事業者が今回インボイス登録した場合は、2023年10月1日から2029年9月30日までに課税期間が属する場合は、その期末まで

「簡易課税」は業種によって、売上に対し仕入額を一定とする「みなし仕入率」を使って計算します。

国税庁「簡易課税制度の事業区分」より

例えば、小売業で課税売上高が1,100万円(うち、消費税100万円)であった場合、「みなし仕入率」に80%を使って計算すると以下のようになります。

原則課税

仕入:100万円×80%=80万円
支払い消費税:100万円-80万円=20万円

「簡易課税」は、仕入の計算が単純化されますが、仕入率の異なる業種で売上がある場合に、計算の面倒が増えるかもしれません。

2割特例

インボイス導入から2026年9月30日までの3年間、「2割特例」が用意されます。

条件は、以下のようになります。

2割特例の条件

  • 2期前の課税売上高が1,000万円以下であり、今回インボイスに登録した

基準期間(2期前)の売上高が1,000万円以下であるのと同時に、今回免税事業者からインボイス登録して課税事業者となった方が該当します。

ガイドマン
インボイス登録以外の事情で課税事業者になった場合は、残念ながら2割特例は利用できません。

この場合、消費税の計算は自分がどの業種であっても2割負担となります。

例えば、先ほどの小売業で課税売上高が1,100万円(うち、消費税100万円)だった企業が「2割特例」に該当した場合、消費税の計算は以下のようになります。

2割特例

支払い消費税:100万円×20%=20万円

仕入分の消費税を一切計算する必要がないので手間を省けますが、3年間だけの期間限定なので注意しましょう。

また、この「2割特例」は特に事前の届け出が必要なく、決算書類や申告書に「2割特例」を適用している旨が記載されていれば大丈夫です。

上に挙げた条件に該当していれば、どの事業者にも適用されますが、「2割特例」を選択した場合のデメリットもあります。

先ほどの「簡易課税制度」を選択した場合、みなし仕入率が80%を超える業種(90%の卸売業など)は、「2割特例」を利用しない方が有利になる可能性があります。

中小企業は簡易課税か2割特例を選択した方がよい

課税方法の選択フローチャート

「原則課税」は、経費となる消費税の区分や支払先がインボイスに登録しているかなどをチェックする手間が膨大な作業となるので、中小企業においては「簡易課税」か「2割特例」を選択した方がよいでしょう。

簡易課税or2割特例のメリット

経理業務が楽
支払う税金が減る
大きく分けてこの2点に尽きます。

「簡易課税」を選択する場合は、事前に「簡易課税を選択する」と言う届け出が必要になるうえ、2期継続する必要があります。

みなし仕入率が80%を下回る場合は、申告時に「2割特例」を選択して少しでも支払う税金を安くしましょう。

まとめ消費税の支払方法3選

今回のお話は、免税事業者を選択した方には一切関係のないお話でした。

消費税は、まともに計算すると結構な納税額になります。

消費税と言うのはお客様から預かっているだけなので、本来であれば納めるまではプールしておかなければならないお金なのですが、どうしても支払いなどが重なると手を付けてしまいます。

上に挙げた支払方法には「期中での届け出の必要性」や「期間限定」もありますが、いわゆる「節税」が可能になるので、しっかり対策しておきたいところとなります。

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