インボイスの豆知識

区分記載請求書とインボイス(適格請求書)の書き方[注意点]

「区分記載請求書」と「適格請求書(インボイス)」で書き方に注意しておく点がいくつかあります。

ちなみにこの2つの請求書についておさらいしておきましょう。

2つの請求書

「区分記載請求書」---免税事業者が請求書を作成する際の様式
「適格請求書」---インボイス登録した課税事業者が請求書を作成する際の様式

それでは、まずインボイスの書き方の注意点を見ていきましょう。

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インボイス(適格請求書)の書き方[注意点]

インボイスに登録済みの課税事業者からもらった請求書が、インボイスの要件を満たしているかどうかは、ぱっと見ただけでは実に分かりにくいです。

ここでは、インボイスの記載に必要な項目の内、間違いやすい点を挙げてみたいと思います。

税率ごとの合計金額は、税別でも税込みでもどちらで記載してもいい

「税率ごと」とは

食品やテイクアウトなど一部の税率は軽減税率で8%
それ以外すべての標準税率が10%

税率ごと(10%と8%)に税別の合計金額を記載

税率ごと(10%と8%)に税込みの合計金額を記載し、消費税も別途記載

上の2パターンは、どちらの形で作成しても問題ありません。

各合計から総合計を記載するまでの流れは以下のようになります。

  • 税率ごとの合計金額を算出
  • 税率ごとの消費税額を算出
  • 総合計を算出

1番において「税率ごとの合計金額を算出し表示する部分」は、『税抜き表示でも税込み表示でもどちらでも構わない』という意味になります。

ちなみに、税率はきちんと記載しないと「適格請求書(インボイス)」と認められないので、必ず記載している消費税額の税率がいくらであるかを分かるようにしておきます。

税率ごとに消費税を記載

消費税の記載についてですが、税率ごとに分けて記載してあれば大丈夫です。

なお、標準税率(10%)と軽減税率(8%)を合計した「消費税の合計額の記載」は必要ありません

登録番号を記載

インボイスに登録済みの課税事業者であれば、インボイス登録番号は必ず記載してなければなりません。

消費税は商品ごとに計算しない

これは、インボイスを見ただけでは中々分かりにくいかもしれません。

インボイスでは、商品ごとに消費税を記載する方法は間違いとなります。

ガイドマン
消費税の端数処理は一つの適格請求書につき、税率ごとに1回しか行えません。

つまり、「税率ごとの合計金額から発生する消費税合計を最後に1回だけ算出する」書き方しか認められていない、というわけですね。

区分記載請求書

「適格請求書(インボイス)」での請求書を作成する課税事業者とは別に、インボイスに登録しない、つまり「免税事業者」を選択した事業者はこれまで同様に「区分記載請求書」により買い手(販売先)に請求書を送ります。

区分記載請求書には、「10%」の消費税がかかる品目と軽減税率である「8%」の消費税がかかる品目を分けて記載します。

さて、この「区分記載請求書」の書き方ですが、インボイス制度が開始された2023年10月1日以降は、売り手(仕入元、サービス提供元)に以下のような事業者が存在すると思います。

  • 買い手(販売先)から『これまで通り消費税も含めた請求でいいよ』と言われた事業者
  • 2026年9月30日までの経過措置である「8割仕入税額控除」を元に8割を乗せて請求する事業者

さて、これらの事業者が請求書を作成する際に、どのように記載したらいいのでしょうか。

上の2つの場合に分けて、順番に見ていきたいと思います。

これまで通り消費税分もすべて請求できる場合

消費税を別途記載してもよい

「小計」と「消費税」を合計して「合計金額」を請求する、という形でも大丈夫です。

もしくは、「小計」を1行だけにして「小計(消費税10%)」と1行だけで完結させても大丈夫です。

免税事業者なので、実際には消費税をもらわないはずですが、『これまで通りの金額請求で言い』と先方に言われたのであれば、あえて請求書から消費税の部分を消さずとも、これまで通り「消費税」と言う形で請求書を作成して問題ありません。

ガイドマン
この場合、免税事業者はフォーマットを変更せずこれまで通りの請求書を使用できるでしょう。

品目から消費税込みで表示する

それでもやはり、『消費税を別途もらっているような書き方が気になるなぁ』と思ったら、品目の金額をあらかじめ「消費税込み」の金額で記載するといいでしょう。

総合計金額には「(消費税10%込み)」のように、金額に消費税が含まれていると明示されていれば問題ありません。

経過措置で8割だけを請求書に記載する

「2026年9月30日まで」の経過措置として、免税事業者からの課税仕入の消費税が80%まで控除できる特例が用意されています。

請求先(買い手側)は、免税事業者から仕入れた(もしくは免税事業者に委託した)課税仕入額の内、8割を「仕入税額控除」にできます。

請求先(買い手側)は2割分の消費税だけ負担すればよくなるので、売り手(仕入元、サービス提供元)には『これまでの請求から2割分だけ差し引いて請求してください』と言うパターンです。

つまり、消費税額10割の内の8割をこちら側(売り手側)で請求書に記載する方法です。

品目から消費税込みで表示する

項目として「消費税」と言う形で載せてしまうと上の請求書例のように「8%の消費税を請求している」ように見えてしまいます。

ガイドマン
軽減税率の8%を計上しているように見えてしまうから紛らわしいね。

実際は、「70,000円の消費税を受け取るところをその8割の56,000円だけ受け取っている」にすぎません。

この場合、軽減税率の消費税8%分をもらっているわけではないので、上のような書き方はやめておいた方がいいでしょう。

それであれば、商品の内訳自体に消費税分も含めてしまった書き方の方が無難かもしれません。

上の場合、商品を「75,600円」で提供しているわけですが、これは70,000円に「8%の消費税分」を合わせて記載しています。

そして、最後の合計に「消費税10%込み」という記載を入れておきます。

経理の管理は大変!

買い手側は、この請求書について「免税事業者からの仕入れの8割税額控除分」と言う形で把握をしておけばそれで問題ありません。
3年間はこのような形で、他のインボイスなどと合わせて、様々な請求書を管理していく必要があり作業量も増えるでしょう。

それに比べると期間限定ではあるものの、免税事業者である売り手側は、請求書の記載方法を考える必要があるとは言え、10割とはいかなくても同じくらいの「8割の消費税分をそれほど手間もかからずそのまま受け取れる」可能性も高いのです。

「8割の仕入税額控除」は免税事業者が、今後インボイス登録に移行する際の負担に対する救済措置とは言え、請求書の管理の手間やインボイスの要件を満たしているかなどの確認の手間を考えると、実は負担が大きいのは『むしろ買い手側の方ではないのか・・』とも思ってしまいます。

「経理の手間」については、以下の記事をご覧ください。


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追記の補正を書いてもらう

免税事業者で、3年間は「8割の仕入税額控除」ができるからと言って、『これからも請求書に消費税をもらうような文言を入れるのはちょっと・・・』と思う方もいるでしょう。

その場合は、上のように「品目に消費税込みの金額」を記載し、合計金額にも「消費税」という言葉を一切入れない請求書を作成できます。

金額や請求日や内容がきちんと書いてあれば、後は買い手側に「追記の補正」をしてもらう手もあります。

この請求書が、「免税事業者」からで、「8割の仕入税額控除」により受け取った請求書である旨をこの請求書に追記メモとして記載しておけば、買い手側が後々管理するときにも分かりやすくなるでしょう。

そういった意味で、追記OKな形で売り手側が請求書を作成すると上のようなシンプルな形になります。

ガイドマン
「追記の補正」は、インボイスでは認められていないよ。免税事業者の請求書だからできるんだね。後は、金額や内容を勝手に追加するのはもちろんダメだよ。

まとめ区分記載請求書とインボイスの書き方

今回、新たにインボイス登録した事業者の方は、今後インボイスに準じて請求書を作成していく必要がありますが、引き続き免税事業者の方が作成する「区分記載請求書」に載せる消費税周りをどのように記載すればいいのか、と言う点は結構難しかったりします。

基本的には、消費税という名目を載せてもいいし、商品代金込みとしてもどちらでもいいようです。

2026年9月30日までの経過措置である「8割仕入税額控除」やその後にさらに期間限定の経過措置である「5割仕入税額控除」がありますので、その間の消費税の記載には十分注意したいところです。

免税事業者で、顧問税理士などと契約している方は、インボイス導入後の「区分記載請求書」の書き方について、一度相談しておくと良いと思います。

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